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思案グラス 1.2

It's under construction.

レイハントンの呪縛

名前の話が続くのだけど、ルイン・リーについて語る前に、「レイハントン」を引き受けたベルリについて少し。

前項:『Gのレコンギスタ』における、名前の寓意


ベルリの居場所

アイーダが実の姉だと告げられたベルリは、内心は戸惑いながらも、彼女への思いを胸にしまって、「姉さん」と呼ぶようになる。

やたらとくっついてみたり、手を握ってみたりして、おさわりもしたりする。(あぁ、なんていじらい子なんだ、ベル…!)

けれど、そうこうするうち、ベルリは居場所を失っていく。

信頼関係を築いてきたメカニックから、「Gセルフって、お前の両親が残してくれたものだし、感謝しろよ」みたいに言われ。「アイーダがお姉ちゃんだって受け入れられたんだ」「強い子だよね」って、ノレドやラライヤにささやかれ。

ベルリは、真綿で首を絞められるように、じわり、じわりと追い詰められる。「僕の帰る場所」だったメガファウナが、「ベルリ・レイハントン」という嘘で崩れていくのだ。(もう、この様子が不憫でならない…)


メガファウナじゃなきゃダメなんだ

第3話で、「長い編成だなぁ…」ってクラウンを見つめるベルリが、僕はすごく好きだった。

1話で、初めての宇宙実習を経験して、まさかのアクシデントにワクワクして、レクテンを動かして戦闘までした。

まさに、「宇宙」という無重力帯(しがらみのない世界)に出て、身体の拡張としての「モビルスーツ」を経験したんだけど、地上に降りたら、現実は何も変わってないわけ。

運行長官の母親が敷いたレールは、どこまでも続いていて、「どうも、自分はここから抜け出せないんじゃないか」… そんな閉塞感を、彼は日々、感じていたんじゃないかと思う。

そして、ベルリがアイーダに惹かれたのは、「自分を外の世界に連れていってくれるかもしれない」という期待があった。

だから、彼女のところには出向きたいし、チャンスがあるなら、ついていったんだと思う。


1話・2話・3話と、ベルリはアイーダと持論を戦わせる場面がある。その中で、彼は一度ビンタされ、自分の世界を否定する存在に、(おそらく初めて)出会う。

母親には手厚く庇護され、教官の鞭を避けて生きてきた少年が、年上のお姉さんにぶたれて、目覚めるわけ。(Mっけにじゃないよ。いや、それもあるかもしれないけど。笑)

キャピタル・アーミィなんて、母だって僕だって知らなかったんですよ!」というセリフに代表されるように、ベルリの知っている世界は、ある時点まで、「=母親が知っている世界」が限界だった。(だから、会話で唐突に母親が出てきて、アイーダは戸惑った)

だけど10話で、その母親の「テリトリィ脱出」をする。ベルリは、アイーダが好きだって自覚して、Gセルフも力を貸してくれて、全力でロボットアニメの主人公をやったわけ。

メガファウナはベルリにとって帰るところになって、そこでの寝食が描かれるし、騎士物語とか、恋物語、成長物語としての要素をクリアして、人生は最高潮!

エウレカ!君じゃなきゃダメなんだ!」って感じで、ベルリはアイーダじゃなきゃダメだし、メガファウナじゃなきゃダメなんだ!って変わっていった。

それなのに、親の因果が子に報い(しかも、とってつけたような両親によって)、帰るところを失っていく。

すべては、「ベルリ・レイハントン」の名前を受け入れてしまったために。


名前なんて希望でしょ

そんなベルリに最大級のカウンターが飛んでくるのが、第23話だ。

この頃になると、アイーダとの恋からパージされたベルリは、戦場での活躍に存在意義を見出している。これは最終話までずっと持ち越される命題で、彼は常に、「親からもらったGセルフの使い道」を探している。

「僕はGセルフの義務を果たす!」というセリフがあるくらい、ベルリは16話以前の自分を捨てて、「ベルリ・レイハントン」として生きている。

その結果、ノレドからは「あんたおかしいよ!」と言われてしまうし、暴走して、我を失ってしまう。

そして、ラライヤとノレドから、

「名前で勝てたり、生き残れたりします?」

「名前なんて希望でしょ。名付けた人の保証じゃないよ」

と諭される。

「自分はベルリ・レイハントンで、両親から受け継いだこのGセルフ・パーフェクトパックを使って、戦争を止めさせるんだ!」

なんていうのは、志は立派だけれど、それはもう、アイーダさんが好きでキャピタルを飛び出した頃のベルリ・ゼナム少年」ではないわけだ。

大地に立つ

ベルリ少年の純情は行き場を失い、いつの間にか、戦場に生きる理由が、ベルリ・レイハントンとしての義務感に変質していた。

けれど、最終回。カバカーリーとの死闘の果てに、ベルリはGセルフを失うことで、呪縛から解き放たれる。その結果、もう一度母親と向き合うことになるのは、象徴的なシーンだろう。

そして、親のもとを離れ、メガファウナからも降りて、自らの足で世界を旅する。レイハントンの名前を捨て、ベルリにとって本当の人生が、ここから始まるわけだ。

「その先に、未来という閃光がある」という歌をバックにしてね。(なんて希望あふれるエンドでしょう…!)


こうしてベルリを大地に立たせた人物こそ、彼のライバル、ルイン・リーだ。

16話以降、ベルリが縛られていた「レイハントン」という規範。それを憎み、滅ぼす(ruin)存在としての、マスクを被ったライバル。

主人公と対をなすにふさわしい彼についての話は、また、次回。


次項:ライバルの名は、ルイン・リー



シリーズ記事
『Gのレコンギスタ』における、名前の寓意
レイハントンの呪縛
ライバルの名は、ルイン・リー

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